こんにちは。前回紹介した「最高の打ち込み環境」vs.「最高の生演奏を録音したもの」はどちらがより心に響くのか?今日はその決着編です。ここから読み始めた方は是非
こちら の導入編を先に読んでからにしてくださいね。そうしないとお話の流れが分かりませんからね~(^ ^)
さて、おさらいです。
「最高の打ち込み環境」はパソコン代入れると二百万円近くの音源、VIENNA Instruments。屋根の上でヘリが飛んでても全く無音の専用録音ホールで一流の演奏者を用いて食べる物、時間、着る服まで規制し、あらゆる奏法をあらゆる音量でハイクオリティーに収録した”とんでも”音源です。下手な演奏者よりよっぽどいい音がします。
対する「最高の生演奏を録音したもの」はチェリビダッケ指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団演奏のもの。名盤中の名盤と呼ばれる一品です。チェリビダッケっておっさんは、まぁとにかく楽譜に書かれている各音の意味をとことん追求する人だったようで、そのためか演奏のテンポは遅く1つ1つの音をじっくり聴かせてくれます。カラヤンエクスプレスとは対極?(笑)
さぁ、この両雄が対決するとどちらが勝つでしょうか?私の心の琴線により触れた方が勝ちです(琴線って言葉、生まれて初めて使ったよw)。なお、言葉ではなかなか伝わりにくいと思いますので、今回はこの動画を元に紹介していきたいと思います。この動画と比較したわけじゃないですよ~
VIDEO
※注意(まじめに)
私はこれらのCDをきちんと対価を支払って購入しました。裏を返せば、対価を支払うだけの聴く価値があるものでなければならないと思っています。ですからダメだと思うところははっきりダメだと書きます(素人ですけども)。でもそれは決して作者・奏者を傷つける意思はないことをご理解ください。より良い音楽の一助となれば幸いです。
まずは冒頭(~0:43)、クラリネットとファゴットの暗~い響きから始まります。話によるとここは「昔、昔、あるところに」を表現しているとか。なるほど、そんな気がします。打ち込み・生もこの重厚感をよく表現できています。打ち込み版では入りの音のタイミングを楽器ごとに聴き取れるほどズラすことで人間らしさを表現しようと意識した跡が見られます。好印象。音もいいね。
0:14 のところでクレッシェンドがあるのが分かるでしょうか?もちろん生も打ち込みもきちんと出来ています。聴いてお分かりの通りこのクレッシェンドはまだまだ余裕のあるクレッシェンド。少し音量と音質が変わったかな?と匂わせる程度がお上品。
ところが打ち込み版はやってしまったのです。高級音源の素晴らしいところは音量の変化に応じてきちんと音質も変わることですが、完全に音質が変わるほどクレッシェンドしちゃってます。言ってみれば咆哮。もちろん fff まで吼えたわけではないのですが明らかにやりすぎ。昔昔から一気に現代に戻ってしまいました。そしてその音をブツ切った!明らかに曲想とマッチしない。その後もブツ切りの嵐。これ、幻想序曲ですよ。。。でも、音はいいんだな、これが(笑)。
私の脳裏にいきなり不安がよぎります。も、もしかして、これは!!?
続いて主題が現れます(0:43~1:29)。この重苦しい主題はこの後、至る所に出てきて音楽を繋いでいきますので覚えておきましょう。各ロングトーンが、静かにそっと、何かを暗示するかのように1つ1つ加わって緊張感が増してきているのが分かると思います。
ところが打ち込み版は、そんな雰囲気一切なし。確かに音の入りを sf する、ダイナミクスを変えるなどして緊張感を持たせようとしたことは理解できます。しかし音を抜くと言うことをしない。出た音がそのままの音量で残るからその音を追いかけてしまって次の音出にインパクトを与えられていない。また音量が大きすぎて音楽が既に前に出てきてしまい、この場面に必要な「これから何かヤバイもんが登場する」と言う雰囲気を消してしまっている。さらに休符に意味を持たせられていない、テンポがクレッシェンド・ディミニエンドと連動していないなど、気になる点は枚挙に暇がありません。
この時点で私は完全に気付いてしまったのですよ。このCDは今回の趣旨に合致しない。その後の演奏も本当に申し訳ないけども惨たるもので、総じて言えば各音を時間軸上に並べただけ。音楽を聴いていると言うより音の連続を聴いているイメージ。「打ち込みました」とはっきりわかる作品です。ただしキラッと光る表現はいくらかありました。そして音はいい。悲しいぐらい音はいい。とても生々しいし芯があるし ppp~fff まで余裕が感じられる。アンビエントも素敵。それだけにとても残念で仕方ありません。
もし興味があって、私の書いていることが信じられないと思うなら是非CDを買って聴いてみてください。その際には何でもいいので生演奏と比較して聴いてください。そうすることで違いが明確に分かります。
と言うことで、「打ち込み vs. 生録音 ガチンコ対決」は生演奏の圧勝でした orz。ただし、打ち込み版はその真価を発揮しないままの決着ですので、打ち込みによるリアリティ再現の可能性が否定されたわけではありませんよ。別の素材で仕切り直しが必要ですね。
今回分かったのは、どんなに優れた高価な音源を所有しても、それを使える技術がなければ作品は残念なものにしかならないと言うこと。これはある程度ガチのような気がします。素人がストラディバリウス(クソお高いヴァイオリンのこと)を持ったところで演奏が人の心に届くかどうかは別のお話であると言うことです。このことは自分にも当てはまると認識・反省しています。
しかし、もう1つ言えるのは確実に音は良いということ。私のブログでは HALion Symphonic Orchestra と言う Cubase 付属の?安価なオーケストラ音源の曲を幾つか紹介していますが、音は断然こちらの方がいい。悔しいですがこれは疑いようがありません。
「同じ技術力で打ち込むなら当然音がいい方が作品の質もいいだろう」まぁ、そうですよね。ただ、聴く人によっては「完全に音源に負けてる」「音源に使われてる」と感じる人もいるんじゃないかと思います。私なんかはそう思われるのだけはイヤでしてね(笑)、そうならないように高い音源は敢えて買わないようにしてるんですよ~(100% 買えない言い訳)。みなさんも良く考えましょう。お金は大事だよ~♪
さて、人をさんざん批判しといてお前はどうなんだ!?と思われる方も当然いらっしゃると思いますので、私の作品も紹介しておきます。上述の Cubase 付属?音源、HALion Symphonic Orchestra で作っています。VIENNA なんて高価な音源で作ってみたいですね~。
■交響曲第9番ホ短調 Op.95(B.178) 「新世界より」-第2楽章:ラルゴ(家路)
http://musictrack.jp/musics/38724
■NHK 大河ドラマ「篤姫」オープニングテーマ曲
http://fxshelves.blog84.fc2.com/blog-entry-112.html
と言うことで、期待して読んで頂いた方には申し訳なかったかもしれませんが、わたしなりの素直な感想を綴ってみました。賛否両論があることは理解しています。批判があれば受けようと思います。そして春口さんごめんなさい。あんた、もっとビッグになるよ!
それにしても「ロメオとジュリエット」、いい曲だ~。
動物使い
2011-11-01 (Tue) 00:03
VSL のデモはまぁ、そうでしょうね。同じ人が打ち込んだ別のデモはもう少し生き生きとしているだけに余計に残念です。打ち込みで鳥肌が立つ演奏を表現できるか、一流オケに勝てるかどうかは私にはわかりません。。。勝ちたいとも思うし、一方で勝って欲しくない自分もいます。人間って楽しい生き物ですね。
そうだ!面白い記事を思いついたから今度書いてみよ!
にょしにいさんも頑張ってください。
にょしにい
2011-10-31 (Mon) 00:40
動物使い
2011-10-25 (Tue) 06:48
紹介頂いたデモを聴いてみました。確かにイマイチですねぇ。。。全体的に軽いですしメインに聴かせるべき音を間違えてる箇所もちらほら。
私は VIENNA を持っておらず分からないので教えて頂きたいのですが、VIENNA って(言葉が悪いですけど)こんなもんなんですか。例えば紹介頂いたデモの冒頭、弦楽器群の再現ですが、チェリビダッケ版では鳥肌が立ちます。そんな再現は VIENNA でも無理なんでしょうか。
樫本大進さんの件、コメントありがとうございます。拝見します。
にょしにい
2011-10-25 (Tue) 00:39
http://www.vsl.co.at/en/67/3920/4701.vsl
にも"Romeo and Juliet"の一部があります。
これもイマイチですね。私はVIENNA Instrumentsをメインで使っていますが、これだけだと何か物足りなさを感じるので、大抵他の音源を混ぜています。
樫本大進さんのスペイン交響曲の件は2011-07-17のBlogコメントに書かせていただきました。
動物使い
2011-10-23 (Sun) 12:45
あまり批判的なことは書きたくなかったので躊躇していましたが、このようなコメントを頂きひとまず安堵しています。また行間を汲み取って頂けたようでありがたいです。月並みな結論ですが事実でしょう。あの音源をきちんと扱えれば相当な域まで達するとも思いますね。ジョニーさんも素敵な作品を作ってください。それでは。
動物使い
2011-10-23 (Sun) 12:36
また1人待っている方がおられましたか。このネタ潜在的ニーズは結構ありそうですね(笑)。そう、打ち込みは大変です。だからこそ仕上げたときの喜びがあるんですけどね。お互い頑張りましょう!ピアノ協奏曲第1番ですか?ははははは。聴いてません (キッパリ!(笑)
ところで樫本大進さんのスペイン交響曲は如何でしたか?
ジョニー
2011-10-23 (Sun) 07:21
楽器も、高級音源も結局はそれを扱う人の技術次第という至極当然なご感想で、どちらかを否定しているわけでもなく、それによって可能性は何であろうと秘めているという点も全く同感です。気持ちいい記事でした。
にょしにい
2011-10-23 (Sun) 01:10
ある程度予想はしていたものの、はっきり書いていただいてスッキリしました。私もチャイコフスキーをいくつか打ち込んでみましたが、違和感がないまで作り上げるのはとても大変なんですよね。ちなみに春口先生のCDはピアノ協奏曲第1番がメインですが、これも同様でしたでしょうか。